INPUT

話し合いを諦めるとき

話し合うことは大事。そんなことはわかっている。

 

けれど、すべての問題は話し合いで解決できるのだろうか。いくら話し合いをしても越えられない壁ってないのだろうか。

コミュニケーションがめんどくさいと感じるときはいつも、自分の言葉が相手に通じないときだ。価値観が違う相手と話しているとき、理解されない、逆に理解できないと感じた経験は誰しもあるだろう。

 

価値観の違う相手と話しているときの対応パターンには「敬遠」「遠慮」「攻撃」の3つがあるという。

意識が高いのと低いの、どちらが良いかと言えば、高いほうがいいに決まっている。ゆえに「意識高い」は、褒めた言葉、敬った言葉だ。しかし実際の用法は「うわっ、意識高っ」と使う。そこには、自分はつきあいたくない、というメッセージが込められている。「意識高い」は、他人を敬して遠ざけるために使われている。

「個性的」も同じ。

多様性礼賛の中では、個性的であることは「良いこと」だ。しかし「あの人、個性的すぎる」と、自分はつきあいたくないという意思表示としても使う。

「みんなちがって、みんないい。(だけど自分はつきあいたくありません)」というのが「敬遠」だ。

 

次に「遠慮」。

誰かが何かで思い悩んでいるようなとき、そこに踏み込むかどうかの選択を前にして、「そっとしといてあげようよ」というように使う。

遠くにいて、慮る。

それは積極的なやさしさとしてもありえるが、消極的に使われることもある。

「関わっても、どうせ背負いきれないから」だ。「違うんだから、どうせわかりあえないから」「かえって迷惑かもしれない」からだ。こうして、関わらないことが正当化される。「みんなちがって、みんないい。(だけど自分は関われません)」というのが「遠慮」だ。

 

そして「攻撃」。

対面する場面ではほとんど聞かず、主にネット上で展開されている。人数も、多くはないだろう。

だが「みんなちがって、みんないい」という、上から与えられた「善いこと」のタテマエ感にうんざりしたときのはけ口として活用されることがある。

「みんなちがって、みんないい。(だけど自分は許さない)」というのが「攻撃」だ。 (※1)

思い返してみると、自分と価値観の異なる相手に対して、無意識のうちに言葉の端々で否定したり遠ざけたりする表現をしているかもしれないと思った。でも、心の中でだけそのように思うことで、自分を納得させるのは悪いことなのだろうか。家族や友人など、相手によってはお互いに理解を示しながら、共通点や妥協点などを探していく思いやりや配慮が必要だ。しかし、社会には自分と異なる価値観の人間がたくさんいる。むしろ価値観が同じ人間なんて存在しない。常に共感、理解、配慮、、、そんなこと考えてたらこっちが疲れてしまう。加えて、相手がこっちの気も知らずに自分の言いたいことばかりを押し付けてきたらどう感じるだろう・・。

 

相手を傷つける攻撃や、疎外する行為がよくないことはもちろんだが、価値観の違いを「受け入れる」必要は本当にあるのだろうか。話し合って理解しあおうとする呪縛から解放されるために、自分と相手は違う、分かり合えなくて当たり前、理解できなくてもいいのだと、自分を納得させる魔法の言葉を持つことも時には大切なように思う。

 

話し合いを諦めたとき、言葉以外の方法で分かりあえる可能性が見えるかもしれないのだから。私はそう信じたい。

湯浅 誠(ゆあさ まこと)

社会活動家・東京大学特任教授

1969年東京都生まれ。日本の貧困問題に携わる。1990年代よりホームレス支援等に従事し、2009年から足掛け3年間内閣府参与に就任。政策決定の現場に携わったことで、官民協働とともに、日本社会を前に進めるために民主主義の成熟が重要と痛感する。現在、東京大学先端科学技術研究センター特任教授の他、NPO法人全国こども食堂支援センター・むすびえ理事長など。著書に『子どもが増えた! 人口増・税収増の自治体経営』(泉房穂氏との共著、光文社新書)、『「なんとかする」子どもの貧困』(角川新書)、『反貧困』(岩波新書、第8回大佛次郎論壇賞、第14回平和・協同ジャーナリスト基金賞受賞)など多数。

[参照サイト]

配慮ある多様性(Inclusive Diversity)に向けて 2020年の幕開けに思う(湯浅誠) – Y!ニュース 2020年1月2日 (※1)

 

違う価値観を理解できなくてもいい。作家・山崎ナオコーラが考える多様性社会の生き方 | Recruit – リクルートグループ

SHARE

  • Twitterでシェアする

  • Facebookでシェアする

OTHER INPUT

BACK TO INPUT INDEX

Discordで随時、
公開編集会議を行っています。

*上質なコミュニティにするためフォームへのご回答をお願いしております。